メルマガ配信時に守るべき法律【配信停止への対応法】
メールマガジンを配信する際、遵守すべき法律に関して十分に理解したうえで配信することは、コンプライアンスの観点から必須といってもよいです。
メールマガジンの配信を始めたばかりであれば、以下のような疑問が生じると思います。
『メルマガ配信時に守るべき法律は何?』
『配信停止にはどうやって対応すればいいの?』
メールマガジンを配信するときには「個人情報保護法」「特定電子メール法」「特定商取引法」の3つの法律は理解しておきましょう。
今回のコラム記事では、メールマガジンの配信を始めたばかり、これから始めようとしているメルマガ担当者様に向けて、メルマガ配信をするうえで遵守すべき3つの法律と、メルマガ配信時の注意点を解説していきます。
個人情報保護法とは
個人情報保護法とは、名前のとおり、個人の情報を保護するための法律です。
名前、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人を識別できる情報(個人情報)を取り扱う企業に対して守るべき義務を定め、個人の権利や利益を守りながら企業が個人情報を活用するために制定されました。
個人情報保護法は3年ごとに見直しされ、近年では改正個人情報保護法が2022年4月1日に施行されました。
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、情報漏えい等が発生し個人の権利や利権を害する恐れが大きい場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化されました。
ほかにも、改正個人情報保護法では、外国にある第三者へのデータ提供時の義務、保有個人データの開示方法、個人データの利用の停止・消去等の請求、公表等事項の充実など、さまざまなルールが制定されました。
このように、個人情報の管理には厳格な対応が求められるようになりました。
メールマガジンを配信するうえでは、メールアドレス、氏名、住所、電話番号といった個人情報に該当するデータを取り扱うことになります。
個人情報保護法を遵守したうえで、メール配信の体制を整備することが求められています。
個人情報流出の事例
個人情報が流出した事例(疑いを含む)の一部を紹介します。
- 森永製薬による個人情報流出の疑い
-
2022年3月、森永製菓株式会社が運営するECサイト「森永ダイレクトストア」の利用者で個人情報が流出した可能性があると発表しました。
- 富士通の個人情報流出
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2021年5月、富士通株式会社によると、プロジェクト情報共有ツール「ProjectWEB」に第三者からの不正アクセスがあり、顧客情報の一部が流出したそうです。
- トヨタによる個人情報の紛失・破棄
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2022年3月、トヨタ自動車によると、販売店で保管していた個人情報が記載された紙の申込書を紛失・破棄したと発表しました。
このように、大企業であっても個人情報流出のリスクは避けられません。
そのため、メールマガジンの配信を行う場合は、個人情報の管理体制を整備したうえで実施することが重要です。
特定電子メール法とは
メールマガジンを配信するうえで、遵守すべき法律のひとつに「特定電子メール法」が挙げられます。
特定電子メール法とは、広告宣伝を目的として短時間に無差別的に、かつ大量に送信される「迷惑メール」を規制するために制定された法律です。
過去には無差別に文字列を設定し、大量にメールを一斉配信する迷惑メールが送信されることがありました。
2002年7月1日に特定電子メール法が施行されて以降、現在では、あらかじめ同意を得たもの以外への送信禁止、送信者情報の偽装の禁止、送信を拒否した者への送信禁止といった内容が定められています。
メールマガジンを配信するにあたり、以下の内容を遵守することが求められています。
- オプトイン規制(事前承諾なしで送らない)
- 送信者情報の表示義務
- 送信元アドレスのなりすまし禁止
- Webサイトに公表されているメールアドレスは、特定電子メール法の対象外
詳細に関しては、総務省の特定電子メールの送信等に関するガイドラインを確認し、どのような対応が求められるのか確認しましょう。
特定電子メール法の適用範囲
特定電子メール法の適用範囲は、主に広告や宣伝を目的とした営利目的の電子メールが対象です。
例を挙げると、以下のとおりです。
- 適用される例
-
- 商品やサービスに関する情報が掲載されたWebサイトのリンクが含まれているメール
- SNSアカウントの紹介、懸賞キャンペーンの結果通知、友人・知人を装った営利目的のサイトへの誘導メール
広告宣伝を目的としないメールの場合は、特定電子メール法の適用外となります。
例を挙げると、以下のとおりです。
- 適用されない例
-
- 取引条件を案内する事務連絡、料金請求といった広告、または宣伝に関係がないメール
- 広告宣伝の内容を含まない挨拶のメール
- 非営利団体(宗教団体、政治団体、NPO法人など)が送信するメール
これらの特定電子メール法の適用範囲にも注意したうえで、適切な対応が取れるようにメルマガ配信の体制を構築する必要があります。
オプトイン・オプトアウトとは
特定電子メール法などに対する法令を遵守するためには、オプトインとオプトアウトを正しく理解し、適切に対応することが求められます。
メールマガジンの配信のように広告宣伝を目的としたメール送信を行う場合は、ユーザーの意思にもとづいてメールの受信が行われるように仕組みを整える必要があります。
オプトインとオプトアウトの説明をしていきます。
オプトイン
オプトインとは、メールを配信することに対して、ユーザーに事前許可を求めることです。
特定電子メール法においては、メールマガジンなどの広告宣伝を目的としたメールの配信を行う際に、メール受信者から事前に許可を取得することが義務付けられています。
メールマガジンの配信登録フォームやインターネット会員登録フォームにて、ユーザーからの許可を得る必要がある点には注意が必要です。
オプトアウト
オプトアウトとは、メール受信者がメール送信者に対して、配信停止の依頼(受信拒否)をすることを指します。
特定電子メール法においては、広告宣伝を目的としたメールを送信する場合、受信を拒否した者への送信が禁止されています。
配信停止の依頼を受けた場合は、メールの送信を止める仕組みを整備する必要があります。
一般的なメール配信システムであれば、オプトアウトに対応した仕組みが準備されているため、安心してメール配信ができます。
特定商取引法とは
特定商取引法とは、悪徳な広告宣伝や勧誘を行う事業者から消費者を守ることを目的としている法律です。
訪問販売や通信販売での消費者トラブルを防ぐために、事業者が守るべきルールが定められているため、ECサイトなどで消費者に販売を行っている場合は規制の対象となります。
特定商取引法においては、以下の規制が定められているため注意が必要です。
- オプトイン規制
- 受信拒否者への広告宣伝を目的としたメール送信の禁止
- メール送信者の表示義務
- 返品特約の有無をわかりやすく表示
- クレジットカード番号の不正取得に対する罰則
特定商取引法の詳細は「特定商取引法ガイド」を参考にして、どのような対応が必要となるか確認しましょう。
メルマガ配信時の注意点
メールマガジンを配信する際は、各種法律で求められている以下の点に対応できているか確認したうえでメールを配信する必要があります。
- オプトイン規制を遵守する
- 同意を証明する記録を保存する
- オプトアウトの配信停止に対応する
- 送信元情報を開示する
- 措置命令の対象行為を行わない
オプトイン規制を遵守する
メールマガジンなどの広告宣伝を目的としたメール受信の承諾を得ていない相手に対しては、広告宣伝のメールを送ることができません。
そのため、メールを送信する前にメールマガジンの登録フォームや会員登録フォームにてメール送信の承諾を得る必要があります。
なお、以下のケースはオプトイン規制の対象外です。
- 名刺交換によってメールアドレスを取得した
- すでに取引関係がある相手にメールを送る
- インターネット上でメールアドレスが公開されている
オプトアウトの配信停止に対応する
メール受信者が広告宣伝のメールを受け取っている場合、オプトインで承諾を得た相手であっても配信停止の希望を受け取った際は、広告宣伝のメール送信を停止する必要があります。
メールマガジンの文末にメール配信停止フォームへのリンクを記載し、リンク先のフォームに必要事項を入力することでメールマガジンの配信停止を行うことが一般的です。
また、一般的なメール配信システムであれば、メールマガジンの文末に設置されている、メール配信停止のリンクをクリックするだけでメール配信を停止させられます。
メールマガジンの受信者にとって、どのような仕組みがもっともストレスなく解除できるのかを検討し、配信停止の仕組みを準備することをおすすめします。
同意を証明する記録を保存する
広告宣伝のメールを送信する場合、受信者から送信の同意を得ていることの記録を保存する義務があります。
総務省の特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイントによると「個別の電子メールアドレスについて、同意を受けた際の状況を示す記録(時期と方法など)」を保存する必要があると記載されています。
一般的なメール配信システムであれば、特定電子メール法の求める条件に対応したシステムとなっているため、メール配信システムの活用を検討することをおすすめします。
送信元情報を開示する
広告宣伝の目的でメールを送信する場合は、以下の表に記載している送信元情報を記載しなければなりません。
内容 | 備考 |
---|---|
送信者の氏名、名称 | メール送信者の氏名、屋号、会社名を記載する |
受信拒否の案内 | 受信拒否の通知先の直前、もしくは直後に受信拒否ができることを表示する |
受信拒否先の案内 | メール送信者が受信拒否の通知を受け取るためのURL、もしくはメールアドレスを記載する |
送信者などの住所 | 表示する場所は任意で構わない |
問い合わせ先の表示 | 問い合わせの受付、電話番号、メールアドレス、URLを表示する |
上記の内容は、特定電子メール法で義務付けられています。
送信メールの内容を確認し、送信元情報に漏れがないか確認をおすすめします。
措置命令の対象行為を行わない
総務省の特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイントに記載されている内容を遵守し、メール受信者が安心してメールマガジンを登録できるように環境を整備することが必要です。
なお、特定電子メール法に違反した場合は、総務大臣や内閣総理大臣から措置命令を受ける可能性があります。
過去に措置命令を受けた事例は、総務省の「迷惑メール対策-過去の措置命令」にて公開されています。
措置命令を受けることにならないように、十分に注意してメール送信を行いましょう。
まとめ
今回は、メルマガ配信をするうえで遵守すべき法律の解説と、メルマガ配信時の注意点について説明しました。
メルマガ配信時に守るべき法律に関して覚えておくべき点は、以下のとおりです。
- メール配信をするうえで個人情報保護法、特定電子メール法など遵守すべき法律がある
- ECサイトなどで消費者に販売を行っている場合は、特定商取引法の規制に注意する
- 法令を遵守できるメルマガ配信の体制を構築することが重要
コンプライアンスに注意したうえでメルマガを配信し、ユーザーが安心してメルマガに登録できるように努めましょう。
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