ECサイトの要件定義とは?基礎知識~構築成功に欠かせない理由まで徹底解説
『ECサイトの要件定義とは?』
『ECサイトを構築するのに、要件定義は必ず必要なもの?』
ECサイトの構築を成功に導く上で、要件定義は絶対に欠かせない重要なステップです。
要件定義なしにECサイトの構築に踏み切ると、目標達成が果たせないばかりか、事業の根幹を揺るがすトラブルを招く恐れもあるのです。
今回は、ECサイト構築に欠かせない「要件定義」について、基礎知識~ECサイト構築に欠かせない理由を徹底解説致します。
ECサイトの要件定義とは?
ECサイトの要件定義とは、ECサイト構築に必要な要件や実装したい機能などを明確にし、担当者全員が認識を共有するための作業です。
具体的には、何のために、どういったECサイトを構築するのかなどを明確化し、目標達成に向けて実装すべき機能の洗い出し、デザインイメージの決定、ECサイト設計図の作成、スケジューリングなどを行います。
ECサイト構築に必要な全ての要件が整理できたら「要件定義書」という書面にまとめ、ECサイト制作に関わる全ての関係者で内容を共有します。
もしも、社内でECサイト構築に関する全ての実務を行えない場合は、必要部分の制作を外部ベンダーに委託することも検討しなければなりません。
つまり、ECサイトの要件定義とは、ECサイトのデザインイメージ、実装したい機能などを整理し、制作に関わる全ての人の認識、意思疎通を統一させ、関係者全員でECサイト構築の成功を目指す重要なステップとなるのです。
要件定義はECサイト構築成功の鍵となる理由
要件定義がECサイト構築において成功の鍵となる理由は、次の5つです。
- 関係者全員の認識が共有できる
- 目的・実装機能が整理できる
- 構築費用が正確に把握できる
- スケジューリングの明確化
- 想定外のトラブルを未然に防ぐ
関係者全員の認識が共有できる
要件定義をしっかり行うことにより、ECサイト制作に携わる関係者間の認識を共有することができます。
良質なECサイトを構築するには、関係者全員が同じ矛先を向き、各々に課されたパフォーマンスを最大限に発揮することが必須です。
とくに制作や機能の実装を外部ベンダーに委託する場合は、要件定義の質こそ、ECサイト構築で成功の明暗を分けるといっても過言ではありません。
外部ベンダーはあくまで「社外関係者」のため、自社の社内事情を100%理解した上で実務にあたってくれるとは到底期待できません。
むしろ外部ベンダーに委託するからこそ、要件定義をしっかりと作成し、双方の認識のズレをなくすことは、ECサイト構築成功において非常に重要な作業といえます。
成果物が納品後、自社がイメージしたECサイトと全く違う仕上がりになってしまわないよう、自社にとって理想のECサイトを構築する上で、要件定義の質こそが重要であるとの認識をもちましょう。
目的・実装機能が整理できる
繰り返しとなりますが、ECサイトを成功に導くには、要件定義でECサイト構築の目的、実装したい機能を改めて整理しておくことが肝心となります。
言い換えれば、ECサイト構築の目的、実装したい機能を整理せずにECサイト制作に着手すると『あの機能が足りなかった』『社内の既存システムと連動するべきだった』など、後々で後悔することになりかねません。
一方、ECサイトの目標は、どの企業にとっても「売上アップを目指す」ことは当然ですが、企業によっては売上アップ以外にも目指すべきミッションは他にもあるはずです。
たとえば、ECサイトのリニューアルを行う場合、在庫や物流システムなど、リニューアル前の問題点が改善されるための要素も制作の目標に含まれます。
あるいは従来のECサイトで「カゴ落ち」の改善に力を注ぎたいのであれば、カゴ落ちツールを実装するのも選択肢の1つです。
要件定義で自社が目指したい目標や実装したい機能をなるべく細分化することで、ECサイトにおけるビジネスの成功をより確実なものに近づけます。
構築費用が正確に把握できる
要件定義で、ECサイト制作の総予算を正確に把握することができます。
構築費用の予算は概算表、あるいは外部ベンダーの「見積書」で確認できますが、要件定義の段階で、想定外の費用に気付くことは珍しくありません。
要件定義を行うことで、実際のECサイト運用に必要な要件、将来起こりえるトラブル対策も全て含めた綿密な費用が明確になるため、むしろ要件定義のあとに出された算出こそが正式な総予算なのです。
ビジネスの成功は、先行投資をいかに早期に回収し、利益を上げることに他ならないため、要件定義でECサイト構築の総予算、ランニングコストを正確に把握することは重要なステップとなります。
社内、外部ベンダーなどECサイト制作の関係者全員で要件定義をしっかりと作り込み、 ECサイト構築、運用の総予算を漏れなく正確に把握しましょう。
スケジューリングの明確化
要件定義でECサイト構築から運用開始までのスケジュール(=時間)を明確化することも、ECビジネスの成功には欠かせない要素となります。
ECサイトに限らず、ビジネスの成功において、お金や予算の問題と同じぐらい重要な要素が「時間」に他ならないからです。
いくら腕のよい制作者に予算をつぎ込み、立派なECサイトが構築できたとしても、運用開始時期が正確にわからなければ、ビジネスの機会損失につながることは避けられません。
とくに物販ビジネスでは、シーズンが売上に大きく影響することがあります。
要件定義でどのように進行していくのかスケジュールを一目で把握し、運用開始時期を正確に特定しておくことは、ECサイト構築を成功に導く上で大きな意義をもつことになるでしょう。
想定外のトラブルを未然に防ぐ
要件定義は、想定外のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
想定外のトラブルとは、顧客の個人情報漏洩、クレジットカード番号などの決済情報の漏洩、突然のサーバーダウン、アクセスの不具合、システムエラーなど、企業経営の根幹を揺るがすものから販売の機会損失につながるものまで多岐にわたります。
要件定義をしっかりと行うことにより、ECサイト運用で起こりえる全てのトラブルの可能性を洗い出し、未然に防ぐための対策を打つことが可能です。
ECサイト構築における要件定義の流れ
ECサイト構築における要件定義の流れは次の7つです。
- 基本情報・サイトコンセプトの整理
- 構築の背景と目的を決定
- ECサイト構築の役割分担・業務フローを整理
- システム要件の洗い出し
- ECサイトの設計図作成
- ECサイトのデザイン決め
- 運用開始までのスケジュールを決定
①基本情報・サイトコンセプトの整理
ECサイト構築にあたり、店舗の基本情報やサイトコンセプトの整理をします。
店舗の基本情報とは、運営会社の会社概要、運営担当者、物流拠点、配送会社など、ECサイト運営元の情報です。
次にECサイトのコンセプトを決定、整理します。
コンセプトとは、ECサイトの概念のことであり、販売ターゲットとしたい人物像を明確化し、世に届けたい価値を明確化することです。
リニューアル時にサイトコンセプトを一新する場合は、要件定義で新たに追加するコンセプトも整理しておく必要があるでしょう。
②構築の背景と目的を決定
2番目のステップは、ECサイト構築の背景と目的を決定します。
前述のように、ECサイト構築の目的と背景は「売上を伸ばすため」であることは、いうまでもありません。
しかし、ECサイト構築に着手にあたっては、売上以外にも様々な背景があるはずです。
たとえば「業界での知名度を上げたい」「新たな購買層を開拓したい」「企業イメージを一新したい」などが挙げられます。
要件定義で自社が叶えたい目的と背景を明確化し、必要要件が満たせる機能を実装しましょう。
③ECサイト構築の役割分担・業務フローを整理
3番目のステップは、ECサイト構築の役割分担、業務フローを整理します。
一般的にハイエンドなECサイトを構築するには、次の業務を行う担当者が必要です。
- ディレクター
- Webデザイナー
- コーディング(プログラマー)
- エンジニア(社内基幹システムとの連携)
- 商品登録
- サイト更新
- Webマーケティング
上記の担当者が担うべき業務フローを整理し、社内の人材で全てカバーできるのか、足りない部分は外部企業に委託するのかを決めていきます。
外部ベンダーに委託する場合は、構築費用だけでなく、サイト更新、運用に必要なランニングコストも含めて長期的な視点で予算を検討しなければなりません。
いずれもECサイトで成功を目指す上では重要なステップですので、数社のベンダーにアサインし、制作費用や更新作業費用などの見積書を作成していきましょう。
④システム要件の洗い出し
4番目のステップは、システム要件の洗い出しです。
ハイエンドなECサイトを構築するには、外部ツールも含めたECサイトに実装するべき機能がたくさんあります。
ECサイト構築、あるいはリニューアルに際し、必ず必要となる機能やシステムの洗い出しを行い「システム構成図」を作成してみましょう。
出典:合同会社TEAM-T
Webにおけるシステム構成図とは、サイトに実装すべき全ての機能を図で表したものです。
社内の基幹システムとの連携や決済管理、在庫管理、物流システムにいたるまで、ECサイト運用に必要な全ての機能、システムや要件を含めて構成図を作成します。
外部ベンダーにシステム構築から委託する場合は、委託する内容を明確化するため、外注先にシステム構成図の作成を依頼しましょう。
⑤ECサイトの設計図作成
5番目のステップは、ECサイトの設計図作成です。
ECサイトの設計図作成は、大きく分けて2つの手順があります。
- サイトマップ(構成図)の作成
- ワイヤーフレームの作成
サイトマップ(構成図)
Webディレクターがサイトマップ(構成図)の作成をします。
サイトマップ(構成図)とは、各Webページの階層をわかりやすく図で表したものです。
トップページや会社情報、商品カテゴリー、商品ページ、ショッピングガイドなど、ECサイトに必要なコンテンツをあるだけ挙げて、それをWebページごとに分類・階層を決めていきます。
サイトマップ(構成図)は、ECサイト制作を行う外部ベンダーに委託が可能です。
ワイヤーフレーム
ECサイトのサイトマップ(構成図)ができたら、続いてWebディレクターは「ワイヤーフレーム」の作成をしていきます。
ワイヤーフレームとは、各Webページの設計図のことです。
Webページのメニューやレイアウト、ボタンなどをワイヤーフレームに書いていきます。
ワイヤーフレームは、ECサイト制作を行う外部ベンダーに委託が可能です。
⑥ECサイトのデザイン決め
6番目のステップは、ECサイトのデザイン決めです。
WebデザイナーはPhotoShopやIllustlatorなどのツールを使って、ワイヤーフレームから各Webページのデザインを仕上げていきます。
ECサイトの制作を外部ベンダーに委託する場合は、ベンダーからクライアントに「デザインカンプ」が共有されます。
デザインカンプとは、サイトデザインの完成見本のことです。
⑦運用開始までのスケジュールを決定
7番目のステップは、運用開始までのスケジューリングです。
ECサイトの設計図・構成図の作成やデザインの決定後、実際の制作には次の6工程が必要になります。
- コーディング
- 社内基幹システムとの連携
- 決済ツールなど必要機能の実装
- 商品登録
- テスト運用
- オープン・プロモーション
外部ベンダーに委託する場合は、制作物の納期を確認し、スケジュール工程表の作成を依頼します。
上記の制作工程を社内で全て行う場合は、各担当者にテスト運用までの納期を確認し、プレオープンに向け、広告配信などオープンプロモーションの時期も確定しておきましょう。
ECサイトの要件定義を決める上でのポイント
ECサイトの要件定義を決める上での重要なポイントは、次の4つです。
- 目標設定に忠実な要件を落とし込む
- コンセプトに沿った要件を洗い出す
- 将来の展望も見据える
- ユーザビリティを考慮する
目標設定に忠実な要件を落とし込む
要件定義では、自社が立てた目標設定に忠実な要件を落とし込んでいきましょう。
ECサイト構築、あるいはリニューアルでは、何か月後にいくらの売上を狙うかによって、必要要件が全くことなります。
わかりやすくいえば、ECサイトの運用を開始してから6か月以内に月商500万円を目標にするための必要要件と、月商5,000万円にするための必要要件は同じではないということです。
自社が立てた売上目標を〇か月以内に達成するには、平均客単価×〇人に販売しなければならないと算出し、目標を達成するためにはどういった要素が必要なのかを綿密に洗い出す作業が求められます。
自社でアイデアが不足している場合は、外部の専門家に意見を聞きながら目標達成に向けて、忠実な要件を実務に落とし込んでいきましょう。
コンセプトに沿った要件を洗い出す
要件定義では、コンセプトにあわせた必要要件の洗い出しを行います。
たとえば、次のようなコンセプトをもつ、ECサイトを構築すると想定しましょう。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
ジャンル | インテリア、日用雑貨 |
---|---|
ターゲット | 30~40代のキャリア女性(独身・共働き) |
想定年収 | 600万 |
普段のライフスタイル | ・最近テレワークが増えた ・仕事がハード |
EC利用状況 | ・月に4~5回はネットショッピングを利用 ・会員登録が面倒でサイトは極力利用しない ・ポイントを必死で貯めている |
上記のペルソナ(販売ターゲット)にあわせた要件定義の例は、次のようになります。
- デザイン:落ち着いた色調・安っぽくなく、ややハイソなイメージ
- 競合との差別化:在宅時間が楽しめるイベントページの挿入など
- ログイン:LINEやGoogleなど普段使っているIDで決済が完了できる
- 決済ツール:楽天市場やAmazonなど他モールのポイントも使えるようにする
このように、要件定義で自社商品の販売ターゲットになるであろうペルソナを具体化し、購買意欲を上げるための機能やデザインを実装していきましょう。
将来の展望も見据える
ECサイトの要件定義は、将来の展望も見据えて作成しなければなりません。
ECサイトの運用とは、構築して運用開始できれば終わりという訳ではなく、将来増えてくるはずの商品点数や顧客人数、アクセス数も見据えた上で、ECサイトを構築する必要があります。
言い換えれば、ECサイトの構築を短期的な計画で安易に実行してしまっては、そう遠くない内に、再度ECサイトのリニューアルを行わなければならない可能性も否定できません。
つまり、ECサイトの要件定義は、ECサイトの構築で費やす先行投資が何年で減価償却でき、何年後にキャパオーバーになるのかを含め、将来起こりえる様々な問題も含めて綿密に行う必要があるのです。
ユーザビリティを考慮する
ECサイトの要件定義は、ユーザビリティを考慮しておくことも、外せない要素です。
ユーザビリティとは、ユーザーがECサイト内で快適に買い物をしてもらうための施策のことです。
具体例としては、商品を検索しやすくする、似たような商品、おすすめの商品が自動的に表示される、ページ遷移がスムーズに行える、などを指します。
また、ECサイト自体の読み込みをなるべく軽くする配慮を行うことも、ユーザビリティを高めることの1つです。
いずれにしても、ユーザビリティはECサイトの構築時に事前にクリアしておくべき課題ですので、ユーザー目線に立ったECサイト作りが行えるような要件定義を行いましょう。
ECサイトの要件定義書テンプレートサイト3選
ECサイトの要件定義書を作成する上で役立つテンプレートサイトは、次の3つです。
外注BOOK(ランサーズ)
「外注BOOK」とは、大手クラウドソーシングサイトのランサーズが運営するするフリーランス向けのWebサイトです。
本サイトによると、有名Web制作会社在職10年の現役Webディレクターが、今でも活用する要件定義書のテンプレートが配布中です。
外注BOOK が配布する要件定義書のテンプレートは、ECサイト向けではありませんが、ECサイト構築時にも十分活用できる内容になっています。
EC事業者は外注業者に自社の意向をスムーズに伝えるため、外注業者の方はクライアントとの認識の相違を防ぐ上で必ず役立つでしょう。
EC-ORANGE
EC-ORANGE(イーシー・オレンジ)とは、オープンソース型のECサイトです。
本サイトによると、ECサイト構築を知り尽くしたEC-ORANGEが、ECサイト構築における15のチェックポイントをテンプレート化してエクセルファイルで配布しています。
EC-ORANGEが配布しているテンプレートは、初めてECサイトを構築する事業者様に役立つテンプレートですので、ECサイト構築を決断したらダウンロードして活用してみてください。
onocom.net
出典:【Office】Excelでプロジェクト管理(工程・実績管理・スケジュール管理)するためのガントチャート・テンプレートを作りました。
onocom.netとは、Webエンジニアの小野 隆士さんが運営するWebサイトです。
プロジェクトの管理工程(実績管理・スケジュール管理)がすぐに作れるテンプレートがダウンロードできます。
テンプレートデータはエクセルで作成されているため、社内・外注などあらゆる担当者の業務進行状況が一目で把握することが可能です。
カスタマイズも可能ですので、どのような方にも活用しやすくなっています。
まとめ
今回は、ECサイト構築に欠かせない「要件定義」についてお話させて頂きました。
まとめますと、ECサイトの要件定義とは、ECサイト構築に必要な要件、実装したい機能などを明確にする作業のことです。
要件定義がECサイト構築成功の鍵となる理由は、次の5つです。
- 関係者間の認識を共有する
- 目的・実装機能が整理できる
- 構築費用が正確に把握できる
- スケジューリングの明確化
- 想定外のトラブルを未然に防ぐ
ECサイト構築における要件定義の流れは次の7つのステップです。
- 基本情報・サイトコンセプトの整理
- 構築の背景と目的を決定
- ECサイト構築の役割分担・業務フローを整理
- システム要件の洗い出し
- ECサイトの設計図作成
- ECサイトのデザイン決め
- 運用開始までのスケジュールを決定
ECサイトの要件定義を決める上での重要なポイントは、次の4つです。
- 目標設定に忠実な要件を落とし込む
- コンセプトに沿った要件を洗い出す
- 将来の展望も見据える
- ユーザビリティを考慮する
ECサイトの要件定義は、サイト制作の関係者が一丸となって、良質なECサイトを構築するために欠かせない重要なステップです。
今回、本記事内でご紹介したテンプレートなどをご活用の上、ECサイト構築成功に必ず導ける要件定義書を作成してみてください。
まずは無料でご相談ください。
お問い合わせ・ご相談や、公開後の修正依頼などに関しては、いずれかの方法にてお問い合わせください。
※年末年始・土日祝は定休日となります
※受付時間 9:00~17:30