ホームページ制作費用における税務ガイド【資産計上と損金処理の違いが分かります】
ホームページにおける制作費用や運用費用をどういった勘定科目で税務処理して良いか分からないという方も多いのではないでしょうか?
ホームページの税務処理を実施する上では、
『ホームページの費用を資産計上することは可能か知りたい』
『ドメインやサーバー等の費用はどの勘定科目になる?』
『具体的な損金処理・資産計上方法について知りたい』
など上記のような問題が生じるかと思います。
本コラム記事では、企業の担当者様へ向けてホームページ制作費用における「勘定科目」「ホームページ種類別の損金処理・資産計上方法」を紹介しています。
ホームページによっては資産計上が可能
ホームページの種類によっては、制作費用の資産計上が可能です。
しかし、原則資産計上は不要であると理解しましょう。
なぜなら、一般的なホームページ制作費用は広告宣伝費として損金処理するためです。
ただし、受注システムやデータベースシステム等のソフトウェアを含むと無形固定資産となり、費用の一部または一式にて資産計上します。
また、下記3つのケースであれば資産計上することが可能です。
- ホームページが固定資産になるケース
- ホームページが前払費用になるケース
- ホームページが繰延資産になるケース
ホームページが固定資産になるケース
制作費用が20万円以上でホームページ制作から1年以上更新していないかつ、ソフトウェア等を含む場合は、固定資産となり使用期間に合わせて減価償却を行います。
ただし、この使用期間1年以上というのはホームページを1年間更新しなかったという場合に適用となるので注意が必要です。
税務上、1年以内に更新があれば、支出効果が1年を超えない広告宣伝費として考えられます。
ホームページが前払費用になるケース
ホームページ制作中に翌期を迎えてしまった場合は、前払費用として処理することが可能です。
前払費用とは、先に費用を支払ったがサービスを受けるのは翌期になる場合に使用する勘定科目です。
前払費用として処理することで、当期の損益計算から除くことが可能となります。
ただし、前払費用の条件として「一定の継続的なサービス契約である」という決まりがあるので注意が必要です。
ホームページが繰延資産になるケース
ホームページの制作費用が20万円以上でホームページ制作から1年以上更新していないかつ、ソフトウェア等を含まない場合、繰延資産として計上します。
資産計上後、使用期間に基づいて減価償却を行います。
資産の区分
ここで資産の区分について理解しておきましょう。
資産は以下3つの区分に分かれています。
- 繰延資産
- 固定資産
- 流動資産
ホームページの税務処理に関係があるのは、繰延資産と固定資産の2つです。
2つの資産の違いは以下の通りとなっています。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
資産区分 | 詳細 | 該当するホームページ |
---|---|---|
固定資産 | 長期間保有し事業に必要な資産 | ・ソフトウェア等を含むホームページ ・使用期間が1年以上 |
繰延資産 | 将来収益に貢献する資産 | ・ソフトウェアを含まないホームページ ・使用期間が1年以上 |
非常に似ていますが、基本的にホームページ内ソフトウェアの有無で区分が変わると覚えておきましょう。
ホームページは広告宣伝費として損金処理するのが一般的
ソフトウェアを含まないホームページは、広告宣伝費として損金処理します。
ソフトウェアを含まないホームページとは、コーポレートサイトや店舗ホームページ等の 「商品のPR」「自社の宣伝」を目的として制作されたホームページが当てはまります。
しかし、ホームページを広告宣伝費とする場合にも条件があります。
ホームページを広告宣伝費とするには1年以内の更新が必要
1年以内の更新がないと、ホームページを広告宣伝費として処理することができないので、注意が必要です。
極端ですが、ホームページ内のお知らせ文やコンテンツを1年以内に一度でも更新すれば、広告宣伝費として処理することが可能です。
1年以上更新しなかった場合は繰延資産となると覚えておきましょう。
ホームページの勘定科目とは?
続いて、ホームページにおける勘定科目について紹介します。
勘定科目とは、企業の取引内容を端的に表したものです。
勘定科目は、正しい税務処理を行うためにも必ず必要となるので、把握しておきましょう。
【勘定科目①】広告宣伝費
広告宣伝費は、自社商品・サービスをPRするために使用する費用です。
ホームページ制作における広告宣伝費は下記の通りとなっています。
- ホームページ制作費用
- SEO対策費
- お問合せフォーム・資料請求フォーム
ホームページ制作費用
ホームページ制作にかかった費用は、広告宣伝費に分類されます。
コンテンツ内容としては「会社概要」「商品・サービス紹介」「お知らせ」等を含むホームページを制作した場合です。
しかし「ショッピング機能」「予約機能」等を含む高機能サイトの場合は、広告宣伝費に当てはまらないケースがあるので注意しましょう。
SEO対策費
SEO対策費は、広告宣伝費に分類されます。
SEO対策は、検索エンジン上位表示のための対策のことで「キーワード選定」「内部対策」「被リンク外部対策」等の作業を実施します。
上記のような作業をSEO業者に依頼した費用は、広告宣伝費として処理が可能です。
お問合せフォーム・資料請求フォーム
「お問合せフォーム」や「資料請求フォーム」の設置費用も広告宣伝費に分類されます。
上記のフォームが広告宣伝費に分類されるのは、宣伝目的の一環であると考えられるためです。
フォームは高機能サイトとの区別が難しいですが、サーバーを経由してデータのやり取りをしない簡易的な機能であれば、広告宣伝費になると理解しましょう。
【勘定科目②】固定資産
固定資産とは、減価償却に該当する資産です。
固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」に分類され、ホームページ制作のソフトウェア等は「無形固定資産」に該当します。
ソフトウェアを含め、無形固定資産や有形固定資産に該当するものは下記の通りです。
ソフトウェア
ソフトウェアは無形固定資産に該当します。
ソフトウェアに当たるものは下記の通りです。
- 商品検索機能
- ショッピング機能
- 予約システム
- 会員システム
- 動画機能
- ゲーム機能
上記の機能を搭載したホームページの場合、資産計上し減価償却を行います。
例えば、ホームページ制作費用に100万円かかり、システム開発費が50万円だった場合は「広告宣伝費として50万円を損金処理」「残り50万円を資産計上して減価償却」する流れになります。
【勘定科目③】広告宣伝費と固定資産の両方に当てはまる科目
ホームページに関する費用の中で「広告宣伝費」と「固定資産」の両方に当てはまる科目もあることも覚えておきましょう。
費用等の条件により、どちらに該当するか変わってきます。
- 動画制作費用
- ロゴマークのデザイン費
動画制作費用
商品や企業のPRすることを目的とした動画の制作費用は「制作費用」や「使用期間」によって勘定科目がことなります。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
動画制作費 | 使用期間 | |
---|---|---|
広告宣伝費 | 20万円以下 | 1年未満 |
固定資産 | 20万円以上 | 1年以上 |
ロゴマークのデザイン費
ホームページ制作時にロゴマークのデザインを外注する場合もあるでしょう。
ロゴのデザインに関しては、商標登録の有無で「広告宣伝費」「固定資産」いずれかに分類されます。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
商標登録 | 詳細 | |
---|---|---|
広告宣伝費 | なし | 制作費用が20万以下の場合 |
固定資産 | あり | 固定資産として10年で減価償却 |
ただし、例外として商標登録なしで、20万円以上の制作費用が発生した場合は、繰延資産となり一定期期間で減価償却する形になります。
【勘定科目④】通信費
ホームページ運用にあたり、定期的にかかる費用は通信費として損金処理します。
通信費用となるものは下記の通りです。
- ドメイン代
- サーバー代
- SSL証明書
ドメイン代
ドメイン代の勘定科目は通信費となります。
企業で運営するホームページの場合、独自ドメインで運用するケースがほとんどなので、ホームページ運用では必ず発生する費用といっても良いでしょう。
ドメイン取得や更新時の費用は通信費として損金処理することが多いですが、広告宣伝費として損金処理することも可能です。
そのため、期ごとに勘定科目を変えないようにしましょう。
サーバー代
サーバー代の勘定科目は通信費となります。
「レンタルサーバー費用」「自社でサーバーを設けている」どちらのケースでも通信費として損金処理が可能です。
SSL証明書
SSL証明書の勘定科目は通信費となります。
SSL証明書は認証レベルによって大きく費用がことなります。
SSL証明書の取得や更新にかかる費用が少額だと、通信費として一括計上ができます。
ただし、SSL証明書の費用が高額だとソフトウェアとして減価償却を行えます。
ホームページの種類別の損金処理・資産計上方法
ホームページの種類によって税務処理方法がことなります。
まとめとして「コーポレートサイト」「ECサイト」「CMS」別に、資産計上方法や損金処理を紹介していきます。
コーポレートサイトは広告宣伝費として処理
コーポレートサイトの場合、広告宣伝費として処理するのが一般的です。
ただし、広告宣伝費として処理する場合は1年以内のホームページ更新が必須となります。
資産計上する場合は、1年以上ホームページ更新していない場合のみ、繰延資産として計上することができ、使用期間に基づき一定期間で均等償却を行います。
ECサイトは耐用年数「5年」を適用して償却
ECサイトの場合「ショッピング機能」「商品検索機能」等にかかった開発費用を資産計上し、耐用年数「5年」として減価償却することが可能です。
ただし、ソフトウェアの開発費用や使用期間によって処理のルールがことなります。
詳細は下記の通りです。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
ソフトウェア開発費用 | 処理ルール |
---|---|
10万円未満 | 減価償却ではなく消耗品費として経費で処理 |
10~20万円 | 少額減価償却資産・一括償却資産 |
10~20万円 | 少額減価償却資産 |
30万円以上 | 無形固定資産 |
CMSは広告宣伝費として一時損金で処理するケースが多い
WordPress等のCMSで制作されたホームページの場合は、広告宣伝費として処理されるケースが多くなっています。
CMSはプログラム言語のPHPで制作されたソフトウェアという見方もできるので『資産計上し、減価償却するべきでは?』と思う方もいるでしょう。
しかし、CMSの最大のメリットが「誰でも簡単にホームページを更新できる」点であることから、1年以内の更新が頻繁に行われることが予想できるので、広告宣伝費として処理されるケースが多いといえます。
会員制サイトなど、大掛かりなホームページでない限りは、広告宣伝費と処理するようにしましょう。
中小企業の場合は特例あり
中小企業や個人の場合「少額減価償却資産」といった特例が設けられています。
「少額減価償却資産」とは、30万円未満の取得額を全額即時償却できる制度です。
固定資産を取得した際に一括で計上することで、節税が期待できる制度になっています。
少額減価償却資産の特例が利用できる中小企業や個人の条件は、下記の通りとなっています。
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事業形態 | 条件 |
---|---|
法人 | 資本金が1億円以下、従業員数が1,000名以下 |
個人 | 使用する従業員が1,000名以下 |
上記以外の企業の場合は取得費用が10万円未満の場合のみ、少額減価償却資産の利用ができます。
まとめ
ホームページの資産計上について紹介しました。 今回のポイントは以下の通りです。
一般的なホームページ制作費用は広告宣伝費として会計処理をしましょう。
資産計上するケースは下記の通りとなっています。
- ソフトウェアを含むホームページの制作費用が20万円以上で1年以上更新していない
- ソフトウェアを含まないホームページの制作費用が20万円以上で1年以上更新していない
ホームページ制作における勘定科目は下記の通りです。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
勘定科目 | 詳細 |
---|---|
広告宣伝費 | ・ホームページ制作費 ・SEO対策費 ・お問合せフォーム |
固定資産 | ・商品検索・ショッピング機能 ・予約・会員システム ・動画・ゲーム機能 |
広告宣伝費・固定資産いずれか | ・動画制作費用 ・ロゴデザイン費用 |
通信費 | ・ドメイン代 ・サーバー代 ・SSL証明書 |
ホームページ種類別の会計処理方法は下記の通りです。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
ホームページの種類 | 会計処理方法 |
---|---|
コーポレートサイト | 広告宣伝費として処理 |
ECサイト | 資産計上し5年で減価償却 |
CMS | 広告宣伝費として処理 |
ホームページ種類によって税務処理方法はことなるので、自社のホームページがどれに当てはまるか判断が難しい場合は、税理士に相談するようにしましょう。
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