ECサイトのフルスクラッチとは?メリット・デメリット・作り方~構築費用まで解説
『フルスクラッチ型のECサイトとは?』
『他の構築方法との違いは?』
フルスクラッチ型のECサイトとは、自社が欲しい要件を全て盛り込み、オリジナルで一から開発する構築方法です。
ただし、フルスクラッチ型でECサイトを構築するには、相当な費用と開発期間が必要になります。
開発に着手するには『本当にフルスクラッチで作る必要があるのか?』といった根本的な問題を踏まえ、よく検討する必要があるのです。
今回はフルスクラッチ型のECサイトについて、基礎知識、メリット・デメリット、作り方~構築費用、気になる「フルスクラッチ型はもう時代遅れ?」の真実まで丸ごと解説致します。
フルスクラッチ型のECサイトとは?
フルスクラッチ型のECサイトは、既存の製品や土台を使わず、一からオリジナルで作るECサイトのことです。
フルスクラッチを「goo辞書」で調べると、次のような検索結果が表示されます。
- 模型の製作で、既製品を組み立てるのではなく、粘土やプラスチック板などからオリジナルの作品を作り上げること。
- アプリケーションやシステムなどの開発で、既存の製品やソースコードを流用せずにプログラムを作成すること。
オリジナル制作のECサイトといえば『どのECサイトもデザインなどもオリジナルで作るのだから、全てあてはまるのでは?』という見方もできなくはありません。
しかし、フルスクラッチ型は根本的に他の開発方法と特性がことなると考えれば、理解が早くなります。
ちなみに、フルスクラッチは和製英語となり「Full scratch」という英語で表現することは適切ではありません。
もし、越境EC向けに海外の開発会社などへ、フルスクラッチ型にてECサイトの開発を委託する場合は「From scratch」と表現する方が適切ですので、間違えないよう注意が必要です。
他の構築方法との違い
フルスクラッチ型を含めたECサイトの構築方法は、次の4つが有力な選択肢となります。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
構築方法 | サービスの具体例 |
---|---|
ASPカート型 | BASE、STORES、カラーミーショップなど |
ECパッケージ型 | EC-ORANGE、ecbeingなど |
オープンソース型 | EC-CUBE、WordPressなど |
フルスクラッチ型 | ユニクロ、ZOZOTOWNなど |
フルスクラッチ型以外の方法は、ベンダー(販売業者)がECサイト運用に必要な機能を予め搭載し、既存のフォーマットや土台を元に開発する方法です。
一方、フルスクラッチ型は既存のCMSや、フォーマット、ソースコードなどを一切使用しません。
自社が叶えたい要件、機能などを全て洗い出し、システムごと一からECサイトをオリジナルで構築する方法となります。
いずれの方法も個々のメリット・デメリットがあり、予算や要件定義などを踏まえ、どの方法で構築するかを慎重に検討していく必要があるでしょう。
ECサイトをフルスクラッチで構築するメリット・デメリット
ECサイトをフルスクラッチで構築するメリット・デメリットは次のようになります。
メリット
- 独自性が高い
-
ECサイトをフルスクラッチ型で構築する最大のメリットは、他社と決して比較されることのない、独自性の高いサイトが構築できることです。
何と言っても、一から自社の希望通りにECサイトを構築していくのですから、カスタマイズも自由であり、デザインや仕様などが競合他社と被る心配もありません。
そのためか、フルスクラッチ型を採用するのはデザインや仕様、マーケティングの独自性が求められるアパレル、化粧品、美容など女性向け商品を扱う企業が多く見受けられます。
- 将来の展望を見越したサイト構築しやすい
-
フルスクラッチ型は、将来の展望を見越したECサイトを構築しやすいのも特徴の1つです。
たとえば、近年主流になりつつある「オムニチャネル化」を、自社にとって理想の形で実践できるECサイトを構築するには、他の構築方法より、フルスクラッチ型の方がはるかに優れています。
オムニチャネル化はECサイト構築だけでなく、社内オペレーションの統一や基幹システムとの連携が必須となるため、ECサイトの構築時には将来必要となる機能に予測が付かないことも珍しくありません。
フルスクラッチ型と比較対象になりやすいECパッケージを使ってオムニチャネルが実践できるECサイトを構築する自体も不可能ではありませんが、独自マーケティング戦略を実践したい企業にとっては、フルスクラッチ型の方が後悔が少ない選択肢となるでしょう。
- 高速PDCAが実現可能
-
フルスクラッチ型でECサイトを構築すると、高速PDCAが実現可能となります。
PDCAとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返し実践することです。
とくに企業の新規プロジェクト発足時は、PDCAサイクルを順調に回すことが肝心であり、いかに素早くPDCAを実現するかが、プロジェクト成功の明暗を分けるといっても過言ではありません。
フルスクラッチ型は、一から自社の希望通りのECサイトを構築することに他ならないため、社内で思いついた計画を即実行し、評価をしながら、問題点を改善するという理想の流れを実践しやすい構築方法といえます。
デメリット
- 構築費用・ランニングコストが高額
-
フルスクラッチ型でECサイトを構築する最大のデメリットは、構築費用、ランニングコスト共に高額であることです。
構築費用が高額なことに加え、フルスクラッチ型は他の方法と比較にならないほど長い開発期間もかかります。
「Time is money:タイム・イズ・マネー」という言葉があるように「時間=お金」と考えれば、開発期間の長さも高額な費用に該当するといえなくもありません。
フルスクラッチ型の開発費用相場については後述しますが、予算があまりに高額であることから、フルスクラッチ型は最低年商30億以上の企業向けの構築方法といえるでしょう。
- 高度な専門知識をもった人材が必要
-
フルスクラッチ型のECサイトの更新には、高度な専門知識を持った人材が必須となります。
ECサイトの更新ごと外部の開発会社に委託するという選択肢もありますが、フルスクラッチ型は社内の根幹のシステムごとオリジナルで構築するため、セキュリティや様々な側面を考えれば、社内で更新できる体制作りを行うことが理想的です。
ただし、社内で高度な専門知識をもった人材がいれば、運用を問題なく行えるのかといえば、必ずしもそうとはいい切れません。
なぜなら、他社がマネできないほど高度な機能をたくさん実装するほど、更新や機能追加が行える人材が限定されるからです。
高度な知識をもっている人材ほど、担当者が退職してしまえば更新や運用が困難になってしまうため、高額な費用をかけて構築したフルスクラッチ型のECサイトが活用できなくなるリスクもあります。
フルスクラッチ型でECサイトを構築するには、将来起こるであろう人材確保の問題も視野にいれ、検討する必要があるでしょう。
- アップデート・機能の追加も困難
-
フルスクラッチ型はパッケージ型など他の構築方法と比べ、アップデートや新しい機能の追加も困難です。
たとえば、ベンダーが提供するクラウド型のECパッケージでECサイトを構築すれば、ベンダーが常にアップデートを随時行ってくれるため、自社で新たな機能を追加する手間は必要ありません。
また、ECパッケージなど他の構築方法の場合は、ベンダー自体がECサイト運用のプロフェッショナルであるため、マーケティングや集客面において追加した方が良い機能をどんどん考案してくれます。
フルスクラッチ型を使って、オリジナルのECサイトを構築すると、サイト運用に必要な機能の研究ごと行わなければならないため、新機能の開発期間、費用も目に見えないコストとなるのです。
フルスクラッチのECサイトは時代遅れ?他方法と比較
フルスクラッチ型でECサイトを構築する方法は『もう時代遅れ』であるという声が増え始めている側面があることも事実です。
フルスクラッチ型と他方法の費用、メリット・デメリットの違いを簡単にまとめますと、次のようになります。
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出店形態 | 構築費用相場 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ASPカート | 0~30万円 | ●費用が安価 ●早期にECサイト構築可能 ●更新・アップデート不要 |
●カスタマイズ不可 ●ランニングコスト要 ●個人・小規模事業者向け |
オープンソース | 0~100万円 | ●初期・月額費用が安価 ●カスタマイズは可能 ●自由度も高い |
●セキュリティが弱い ●専門知識の人材要 ●本格EC構築は費用が必要 |
パッケージ | 100~500万円 | ●本格的なECサイト構築可能 ●カスタマイズも多少可能 ●フルスクラッチより安価 |
●費用は最低数百万以上 ●基幹システムと連携が困難 ●更新費用もかかる |
フルスクラッチ | 500万円以上 | ●100%のカスタマイズ可能 ●将来を見越したEC構築可能 ●高速PDCAが実現可能 |
●構築費用がかなり高額 ●高度な専門知識の人材要 ●リニューアル・UDが困難 |
ASPカート型
BASE(ベイス)、STORES(ストアーズ)などに代表されるASPカート型のECサイトは、初期費用、月額費用などの構築費用、ランニングコストが最も安く、すぐにECサイトの運用を始めることができるのが特徴です。
必要な機能の実装やデザイン、カスタマイズの自由はほぼなく、ベンダーによっては出品できる商品数も限定されており、狙える売上のキャパシティが限られています。
ASPカート型でのECサイト構築、運用は、個人や小規模事業者に向いている方法といえるでしょう。
オープンソース型
EC-CUBE(イーシー・キューブ)、WordPress(ワードプレス)などに代表されるオープンソース型は、ASPカート型と同様、ECサイトに必要な機能、デザインテンプレートなどが用意されている構築方法となります。
ベンダーがソースコードを公開しているので、専門知識をもった人材がいればソースコードを用いたカスタマイズも可能です。
ただし、ほとんどのオープンソース型CMSは無料でダウンロードできるため、ユーザー数が多く、ハッキングなどのセキュリティ面が弱い側面があり、情報漏洩が気になる企業にとってはセキュリティ強化が課題となります。
また、ダウンロードは無料ですが、さまざまな機能を追加していくと費用がかさんでいくため、高度なECサイトに実装するほど、パッケージ型などの選択肢と構築費用の総額が変らなくなるでしょう。
パッケージ型
パッケージ型はフルスクラッチ型と、有力な比較対象にされやすい企業向けの構築方法です。
主にクラウド型と、自社のサーバーにインストールするECパッケージ型に分かれ、ハイエンドなECサイトが構築できます。
他の方法と同じく、ECサイト運用に必要な機能は全て搭載されており、ソースコードを公開してくれるベンダーなら自社でカスタマイズも可能です。
パッケージ型はフルスクラッチ型と比較すると、事前に土台ができていることから、開発期間が大幅に短縮でき、費用削減になります。
ただし、開発会社や製品によっては実装できる機能が限られていることもあるため、必要要件が多い企業にとってはフルスクラッチ型で一から制作すること、費用や期間に大差がなくなる可能性もゼロではありません。
フルスクラッチ型ECサイトの作り方
フルスクラッチ型ECサイトの作り方は、次の7つのステップを踏まえることです。
- マーケティング戦略を立案
- 要件定義
- サイト設計
- デザイン・コーディング・開発
- 商品登録・テスト期間
- 決済ツールの準備
- 運用開始
【ステップ1】マーケティング戦略を立案
まず行うべきは、マーケティング戦略の立案です。
マーケティング戦略とは、ECサイト構築の目的とコンセプトを含め、どんな市場、ターゲットを狙うのか、業界でどのようなポジションを狙うのかなど、ECサイト運営の根幹に関わる重要なステップとなります。
繰り返しとなりますが、フルスクラッチ型は他の選択肢より膨大な費用、時間をかけて一からECサイトを構築する方法です。
膨大な費用と時間をかけて構築するオリジナルのECサイトを通し、自社が世にどのような価値を届けられるのか、届けるべきなのかを洗い出し、明確化していきましょう。
【ステップ2】要件定義
マーケティング戦略の大軸が決まったら、次に行うべきは「要件定義」です。
要件定義とは、すでに決定したマーケティング戦略に基づき、どのようなECサイトにすることが適切なのか、必要な機能、デザインの方向性などを明確にしていきます。
フルスクラッチ型のECサイトを使って、実店舗や他の販売チャンネルと連携するオムニチャネル化を狙う場合は、自社が実装したい機能などを整理しておくことが必要です。
ただし、近年では要件定義の段階で『100%フルスクラッチでなければ、本当に当該要件を満たせないのか』という現実的な観点も含め、パッケージ型とフルスクラッチ型をある程度混ぜて開発を行う企業も増えています。
前述の人材の問題、将来の展望も踏まえ、本当に自社にとって有益となるECサイト構築方法ごと検討していく必要があるでしょう。
【ステップ3】サイト設計
マーケティング戦略、要件定義などが決まれば、具体的なECサイトの設計に移ります。
開発を他社に外注する場合は、社内で決まった要件定義に沿い、ECサイトの「ワイヤーフレーム」の作成をベンダーに依頼しましょう。
ワイヤーフレームは、サイト全体の設計、階層構造を示すECサイト構築を具体化するための重要なステップです。
近頃では、どの企業もスマートフォンのユーザビリティをいかに上げるかが、ECビジネス成功の明暗を分けます。
フルスクラッチ型で費用と時間をかけるからには、作り手としてはあれもこれもと要件を増やしたくなりますが、さまざまな機能をつけすぎるとレスポンシブが悪くなる、システムエラーが起こりやすくなるなどの問題も付きまといます。
自社のECサイトに訪問してくれるユーザー目線に立ち、ユーザーが快適に買い物を楽しめるサイト設計を行う必要があります。
【ステップ4】デザイン・コーディング・開発
サイト設計が決まれば、実際の開発工程に入ります。
デザインは色調のトーン、ロゴ、フォント、画像のフレームなど、ECサイトのみた目を整えていく工程です。
コーディングはHTMLやPHP、JavaScriptなどのプログラム言語を用い、ワイヤーフレームやデザインに沿って必要な機能を実装していきます。
フルスクラッチ型のECサイトは、大規模サイトが前提となるため、専門のエンジニアを使って社内の基幹システムと連携させる工程も必要になるでしょう。
【ステップ5】商品登録・テスト期間
ECサイトの大軸が完成したら、商品登録を行います。
ASP型やパッケージ型とことなり、フルスクラッチ型のECサイトにおける商品登録方法は、開発方法に沿って商品登録を行わなければなりません。
フルスクラッチ型のECサイトは商品点数も膨大な場合が多く、商品登録はどのような人材でも簡単に行えるシンプルな設計にした方が、ECサイトの運用がしやすくなります。
次に、商品登録が完了したら、一般公開前のテスト運用期間を設けましょう。
実際に完成したECサイトに注文を入れてみて、ECサイトがきちんと稼働するか、各部門ときちんと連携するか、エラーは出ないかなどを具体的にテストしていきます。
ECサイト構築時にオムニチャネル化を初めて実装する場合は、在庫や各システムの連動などが正常に動作するかのチェックも欠かせません。
デバイス(パソコン、iPhone、Android)や検索エンジン(Google、Yahoo Japan)などの動作確認も忘れないようにしましょう。
【ステップ6】決済ツールの準備
商品登録、テスト運用と同時に進めるべきは、決済ツールの準備です。
フルスクラッチ型のECサイトでは、全てのニーズの顧客を逃がさないよう、あらゆる決済ツールを網羅しておく必要があります。
近年では、いかに会員登録の手間を削減するかが、販売機会損失を防ぐ鍵となりますので、可能であれば、初回の会員登録をせずにユーザーが効率よくログインし、購入手続きを完了させられることが理想です。
サイト離脱を防ぐためにも、Google、Yahoo!JAPAN 、LINE、Facebook、など、国内主要のIDを使って購入が完了できる決済機能の導入を検討しましょう。
【ステップ7】運用開始
テスト運用で問題なければ、いよいよ本番でECサイト運用の開始です。
本番の運用前には、大々的なプレオープン向けのプロモーション活動は必須となります。
既存会員への告知、オープンセールや、クーポン、ポイントアップなど、さまざまなプロモーション方法を駆使し、一人でも多くの顧客獲得を目指しましょう。
フルスクラッチ型ECサイト構築費用相場一覧
以下は、開発会社にフルスクラッチ型でECサイト構築を依頼した場合の費用相場です。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
社名 | 初期費用・費用感 | 月額 |
---|---|---|
七洋株式会社 https://www.nanayou.co.jp/solution/ec/ |
500万円~ | 20万円~ |
株式会社コムセント https://comcent.co.jp/ec.html |
300万円~ 550万円~(モール型) |
― |
株式会社インターネットシステムフロンティア https://www.ibf.co.jp/ |
1,000万円~ | ― |
株式会社メテオリレイ https://www.meteorelay.jp/system/ec.php |
500万円~ | ― |
フルスクラッチ型でECサイトを構築した場合の費用相場は、おおよそ500~1,000万円ほどです。
ただし、上記はあくまで参考であり、実際の費用の詳細は各開発会社に実際に見積りを取ってみないと、わからない部分もあります。
全体的な傾向としては、自社が必要とする要件をどの程度まで満たすか、どの程度までの機能を実装するかで予算がことなります。
開発会社によっては月額費用を徴収する方式を採用していることもあり、自社に専門知識をもった人材がそろっている場合は、月額費用なしの開発会社を選ぶ方がランニングコストを削減できるでしょう。
フルスクラッチ型ECサイト事例4選
フルスクラッチ型で構築しているECサイトの事例は次の4社です。
- ユニクロ
- ZOZO TOWN
- ヨドバシカメラ
- 無印良品
ユニクロ
出典:ユニクロ
ユニクロは、フルスクラッチ型ECサイトの代表的な事例です。
ユニクロはかねてから、ECサイトでの売上に強い企業であることで知られていますが、コロナ禍の巣ごもり需要も後押しし、2021年8月期決算では1,269億円とアパレル業界トップクラスの売上高を誇っています。
ユニクロがECサイト事業で一人勝ちを続けている秘訣は、独自性の高いECサイト戦略です。
実店舗とECサイトの連動による「店頭受け取り」、着こなし発見アプリ「スタイルヒント」の導入で、リアルとバーチャルの融合を見事に成し遂げ、コロナ禍の巣ごもり需要にマッチした成功事例といえるでしょう。
ZOZO TOWN
出典:ZOZO TOWN
ファッション専門サイトのZOZO TOWNも、フルスクラッチ型で制作されているモール型ECサイトの典型例です。
国内最大級のアパレルブランド商品数が軒を連ねるZOZOTOWNは、既存のECパッケージでは作れない容量、情報量、世界感を醸し出しています。
若年層を取り囲む新たなプロモーション戦略も成功し、2021年度には過去最高58%の増収増益を叩き出しています。
無印良品
出典:無印良品
楽天市場やAmazonジャパンなど、近年大手ECモールにも販路を拡大している無印良品ですが、自社サイトはフルスクラッチ型で開発されています。
無印良品のEC通販の売上高(2020年の6か月決算)は、161億8,900万円と前年比37.9%の大幅増を叩きだしており、フルスクラッチ型ECサイトならではのネットとリアルの融合に成功しています。
「MUJIパスポート」という自社アプリの開発により、店舗に訪れた顧客がチェックインし、マイルを貯めるとクーポンがもらえるなど、さまざまなチャンネルから顧客を囲い込んでいます。
さらに、独自開発の「MUJI passport Pay」の導入により、バーコードの提示だけで全国の店舗でスムーズに買い物ができるなど、決済システムの強化による集客をうまく活用している一例でしょう。
ヨドバシカメラ
出典:ヨドバシカメラ
家電業界ECサイトNO.1のヨドバシカメラの自社サイトも、フルスクラッチ型で制作されています。
ヨドバシカメラが家電業界ECサイトでトップを走り続ける理由は、圧倒的な商品点数の多さ、配送スピードの速さ、送料無料があげられますが、いずれもフルスクラッチ型でなければ実現できないサイト規模です。
また、ユニクロや無印良品などと同様、店舗でみた商品をインターネットで、インターネットでみた商品を店舗でというオムニチャネル化の成功や、ヨドバシポイントによるリピーター獲得に成功していることも、フルスクラッチ型ならではの実装機能といえるでしょう。
まとめ
今回はフルスクラッチ型のECサイトについて、基礎知識、メリット・デメリット、作り方~構築費用などを含め、くわしくお話させて頂きました。
まとめますと、フルスクラッチ型のECサイトとは、既存のフォーマットやソースコードなどを使わず、一からオリジナルで作るECサイトのことで、基本的には年商30億以上の企業向けの構築方法です。
フルスクラッチ型を含めたECサイトの構築方法としては、次の4つが有力な選択肢となります。
- ASPカート型:BASE、STORES、カラーミーショップなど
- ECパッケージ型:EC-ORANGE、ecbeingなど
- オープンソース型:EC-CUBE、WordPressなど
- フルスクラッチ型:ユニクロ、ZOZOTOWNなど
フルスクラッチ型以外の方法は、ベンダーがECサイトに必要な機能を全て盛り込み、既存のフォーマット、土台を元に開発する方法です。
いずれの方法でECサイトを構築しても、費用、セキュリティ、カスタマイズ度、実装できる機能の限界などにより、各々のメリット・デメリットがあります。
ECサイトをフルスクラッチで構築するメリット・デメリットは、次のようになります。
▼スマホの場合は横にスクロールしてご覧ください
メリット | デメリット |
---|---|
・独自性が高い ・将来の展望を見越したサイト構築しやすい ・高速PDCAが実現可能 |
・構築費用、ランニングコストが高額 ・高度な専門知識をもった人材が必要 ・アップデート・機能の追加も困難 |
フルスクラッチ型ECサイトの作り方は、次の7のステップを踏まえることです。
- マーケティング戦略を立案
- 要件定義
- サイト設計
- デザイン・コーディング・開発
- 商品登録・テスト期間
- 決済ツールの準備
- 運用開始
フルスクラッチ型で構築しているECサイトの事例は次の4社です。
- ユニクロ
- ZOZO TOWN
- ヨドバシカメラ
- 無印良品
フルスクラッチ型のECサイトは、世界で1つだけの完全オリジナルサイトが作れ、自社が欲しい機能を完璧に実装できる構築方法です。
ただし、膨大な費用、開発期間の長さなどのデメリットもあり、近頃ではパッケージでも十分に要件が満たせるようになっており、多くの企業ではパッケージ型とフルスクラッチ型の要素を融合させて制作を行う傾向が強まっています。
いずれの方法でも、自社にとってECサイトで実現したい要件を綿密に洗い出し、個々のメリット・デメリット踏まえた開発方法を検討しましょう。
まずは無料でご相談ください。
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